公の施設の利用拒否(迷惑行為への対応)

1.公の施設の迷惑行為に対する、警察関係などへの対応

公の施設において、利用者が甚だしい迷惑行為を行う場合などがあります。施設側は、そうした行為への対応として、利用者が施設を利用するのを拒否する対応が行うことが考えられます。一般的には、当該公の施設の設置条例の個別の根拠規定に基づき、入館拒否などの行政処分を行うことになることが通例だと思います。ただし、それと同時に、警察への通報を行うことが考えられます。
現に迷惑行為がおこなわれている場合は、まず「退去」を求め、それでも退去しない場合には、不退去罪等を構成するとして、警察への通報を行うことが考えられます。不退去罪という形での立件に持ち込むためには、どのような手順を踏むか、どのような形で証拠を残すか、どういう状況であれば逮捕等を行うことが可能か(警察による逮捕、警察以外の者による現行犯逮捕)など、事前に警察等と相談することが必要と思われます。

2.公の施設の迷惑行為に対する、利用拒否処分

迷惑行為について、行政処分としての「利用拒否処分」を行うことが考えられます。これについては、もちろん、法律行為を行うのであるという意識をもって、適用条文・該当する事実関係・決裁権限等を事前に整理しておく必要があります。
岐阜県の土岐市図書館の事件(ある女性が、大量の図書を借り出すなどの迷惑行為を繰り返し、これに対し、市教育委員会が入館禁止の処分を行った事例)では、地裁は違法な処分、高裁(控訴審)は合法な処分ということで判断が分かれました。こうした事例などを踏まえ、顧問弁護士などと十分に相談・検討をしておく必要があるといえます。

3.公の施設の迷惑行為に対する、利用拒否処分を指定管理者が行う場合の対応

当該施設の管理運営業務を指定管理者が行っている場合、利用拒否処分を行いうるのは、当該指定管理者になります。つまり、処分庁は指定管理者になります。もちろん、利用拒否処分の通知は行政処分であるので、教示(行政不服審査法・行政事件訴訟法参照)を記載する必要があります。
また「条例にもとづく処分」であるので、当該地方公共団体の有する「行政手続条例」の適用対象になり、それに基づき手続を進める必要がある(一般的な解釈でいうと、「入館の拒否」は許認可等の取消等に該当せず、聴聞までは不要と考えられます。)


第12条 指定管理者は、スポーツ施設の入館者が次のいずれかに該当する場合は、入館を拒み、又は退館を命ずることができる。
(1) 他の入館者に迷惑をかけ、又は迷惑をかけるおそれがあるとき。
(2) その他スポーツ施設の管理上支障があるとき


上記のような条文で、スポーツ施設の管理上支障があるというような極めて抽象的な要件となっている場合が多いですが、実際には公の施設の利用を拒絶するという重大性から、従前からの経緯などから具体的な支障が明らかである必要があると思われます。

4.公の施設の迷惑行為に対する、利用拒否処分を指定管理者が行う場合の対応

当該行政処分がなされる場合、審査請求を市長に対し行うことができる。
当該審査請求に関しては、議会の諮問を経て裁決を行うことになる。

5.公の施設の迷惑行為に対する、事実上の「退去」を求める行為

施設管理権の一環として、単に「退去」を求めることも可能であると考えられます。この、退去を求める行為は、行政処分に該当しないと考えられます。具体的には、その現場で迷惑行為を行う者に退去を求め、退去しない者については「不退去罪」を理由に警察に通報するなどが考えられますが、こうした「求め」は行政処分ではないと考えることも可能です。