1.地方自治法96条2項の議決事件について
地方自治法96条1項においては全国の各地方公共団体の共通ルールとしての議決事件が定められていますが、それとは別に同法96条2項において各地方公共団体がローカルルールとして議決事件の類型を設けることが可能であると定められています。すなわち、議会が条例を定めることによって、当該自治体の独自ルールを設けることが可能になるのです。
-地方自治法-
第九十六条
2 前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものにあつては、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。
この青字の部分は、地方自治法施行令121条の3について定められています。
2.大阪市の例
大阪市の場合「地方自治法第96条第2項の規定による議会の議決すべき事件に関する条例」という条例のなかで、(1)株式の売払いでその予定価格が100,000,000円以上のもの、(2)特定複合観光施設区域整備法(平成30年法律第80号)第9条第9項(同法第10条第4項及び第11条第3項において準用する場合を除く。)の規定に基づく同意という2つが議決すべき事件になっています。
3.横浜市の例
横浜市の場合、議会基本条例のなかに次のような規定がおかれています。
(法第96条第2項の議決事件)
第13条 法第96条第2項に規定する条例で定める議会の議決すべき事件は、次に掲げるものとする。
(1) 基本構想(市政の総合的かつ計画的な運営を図るために長期的な展望に立って定める構想をいう。以下同じ。)の策定、変更(軽微な変更を除く。以下同じ。)又は廃止
(2) 基本計画(基本構想に基づき市政全般に係る政策及び施策の基本的な方向を総合的かつ体系的に定める計画をいう。以下同じ。)の策定、変更又は廃止
(3) 市政の各分野における政策及び施策の基本的な方向を定める計画、指針等(当該計画、指針等の期間が3年以上のもののうち、運営上特に重要なものに限る。)の策定、変更又は廃止
上記の横浜市議会基本条例では、計画についての「策定」と「変更」と「廃止」がそれぞれ議決事件とされています。計画を策定したり、それを変えたり、廃止するというプロセスについて、議会の議決を関与させることで、より民主的な地方自治を実現しようとするものといえそうです。ただし、地方公共団体はかなり多くの数の計画を各分野で定めていますが、そのうち特に「基本」に関するものについてのみ、議決を経るという定めのようです。
こうした基本計画等は、各市の行政手続き条例によってパブリックコメント(意見公募手続)の対象となっていることもあります。
4.さいたま市の例
この他に、さいたま市でも同様の規定がおかれていますが、さらに「市長等は、次に掲げる契約等をしようとするときは、その相手方となるべき者を定める前に、議会と協議の上、当該契約等の概要を議会に報告するものとする。」(さいたま市議会の議決すべき事件等に関する条例第3条第3項)というように、独自の「報告」義務化のルールが取られています。