地方自治法の「過料」

1.行政上の秩序罰としての「過料」

地方自治法上、過料に関しては、下記の通り、定められています(14条3項、15条2項)。

-地方自治法-
第十四条
3  普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
第十五条
2  普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

・条例に違反する行為について、条例で科する旨の規定を設けることが出来る罰則
├刑罰(行政刑罰)-懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収
└行政上の秩序罰 -過料

2.行政上の秩序罰とは何か

この行政上の秩序罰という概念が、難しい概念、分かったようで分からない概念です。目的が「行政上の秩序を維持するため」にあり、そのために「秩序違反行為に対して科される」類いのものと説明されています(「逐条地方自治法第6次改定版p.192)。
端的にいえば「罰」ではあるが、「刑罰ではない」罰という概念があって、それを科すためには検察官が起訴する必要もなく、裁判所を経由する必要もなく、行政のなかで完結できる罰があるというカテゴリーがあるという理解でいいかと思います。

3.行政上の秩序罰を科す手続

地方公共団体の目線でいうと、次のような違いがあります。
・行政刑罰 = 告訴/告発を行う → 検察官による起訴(公訴の提起) → 刑事訴訟手続
・過料   = 科料を賦課する行政処分(これのみ)
行政手続条例における不利益処分に該当するため、弁明の機会の付与が必要となります。
つまり、随分、手続の流れが異なることになります。過料の場合、不服がある市民としては、その処分に対し不服申立て(審査請求)を行うか、もしくは裁判所に行政訴訟を提起するという流れになります。

4.過去からの経緯

昔の地方自治法は、条例で行政上の秩序罰としての過料を科すことを認める明文の規定がなく、否定説が有力だったそうです(宇賀「地方自治法概説」3版_p.164)。いまは過料を科すことができるのが当然ですので、いまとなってはすごく不思議ですね。