1.地方自治法における財産の「交換」について
地方自治法上、普通財産の交換に関しては、下記の通り、定められています(238条の5)。
普通財産であれば、交換をすることが出来ます。行政財産のままで、交換をするということはありないです。
-地方自治法-
第二百三十八条の五 普通財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができる。
2.地方自治法における「交換」の議決について
地方自治法上、交換は、「条例で定める場合を除くほか」、議決が必要とされています(96条1項)。
-地方自治法-
第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。
3.議会の議決を経ずに「交換」を行うことが出来る場合について
財産の交換、譲渡、貸付け等に関する条例(横浜市)では、下記の類型の場合は、議会の議決を経ずに行うことが出来るとされています。
-財産の交換、譲渡、貸付け等に関する条例(横浜市)-
(普通財産の交換)
第2条 普通財産は、次の各号の一に該当するときは、これをこれと同一種類の他の財産と交換することができる。ただし、交換しようとする財産の価額の差が、高価であるものの価額の4分の1をこえるときは、この限りでない。
(1) 本市において公用または公共用に供するため、本市以外のものが所有する財産を必要とするとき。
(2) 国、他の地方公共団体その他公共団体または公共的団体において公用、公共用または公益事業の用に供するため、本市の普通財産を必要とするとき。
2 前項の規定により交換する場合において、その価額が等しくないときは、その差額を金銭で補足しなければならない。
こうした条例は、多くの地方公共団体で同趣旨の規定振りとなっています(たとえば大阪市財産条例なども同じようなつくりになっています)。これは、国有財産法第27条で、国有財産の場合も同様になっているため、それに準じて各地方公共団体が条例を定めたということではないかと思われます。
このように、議会の議決を経ずに、条例の定めにより、交換を行うにあたっては、(1)普通財産であること(当たり前のことであるがそもそも行政財産のまま交換を行うことは出来ない。)、(2)自分側か相手方側かいずれかにおいて公用または公共用(相手においては公益事業の用も含む。)が認められること、(3)何らかの方法で財産の鑑定等を経て差金による調整を行うことが要件になっていることが多いようです。
地方公共団体の側が、交換差金を払う側であるときには、貰う土地の登記を終えてから交換差金を支払う(横浜市公有財産規則第19条参照)ことになります。地方公共団体の側が、交換差金を貰う側であるときには、交換差金を受け取ってから登記を移転することになります(同規則第65条)。
4.地方公営企業における財産の「交換」について
地方公営企業では、地方自治法96条1項6号は適用除外になり、議会の議決は不要です(地方公営企業法40条1項)。
5.地方自治法における財産の「交換」の議案について
交換の議案の例として次のようなものがあります。
議案第**号 A区B町所在土地と同町所在市所有土地との交換 次のように財産を交換するため、議決を求める。平成**年*月**日提出 X市長 甲野乙男 1 交換する財産の表示 (1) 交換受け財産 土地 所在 地目 地積 評価額 A区B町2番の1 宅地 *****㎡ *********円 (2) 交換渡し財産 土地 所在 地目 地積 評価額 A区B町2番の2、2番 宅地 *****㎡ *********円 2 交換差金 A株式会社は、X市に、 ****円を支払う。 3 交換の相手方 東京都D区H1丁目**番***号 A株式会社 代表取締役 甲野乙太郎 社 長提 案 理 由 財産を交換したいので、地方自治法第96条第1項第6号の規定により提案する。 |
議案には、自分側で保有している「この土地」と、相手側が保有している「この土地」を、差金で調整して交換するということを書くことになります。交換の議案というと、各市役所や各県庁において何十年に1回ぐらいしかすることはないのかもしれませんが、「財産の取得」の議案は割とよく行われているのではないかと思います。基本的には「財産の取得」の議案をベースに、上記のような記載例を参考に、少し形を整えるということになる思われます。
「さいたま市」の議案の例なども検索することが出来ましたが、「交換に供する財産」と「交換により取得する財産」という表現が用いられています(平成26年6月の「交換により取得する土地に、大宮区役所等を移転するため。 」の議案)。