裁定的関与(不服申立て)

1.裁定的関与とは何か

裁定的関与とは「地方公共団体が行った処分について国等に審査請求や再審査請求をすることができる仕組み」のことを指します。典型的な場合は法定受託事務の場合です。地方自治法の定めにより、法定受託事務の場合、市町村の処分については都道府県でまず審査されることになります(第255条の2、末尾に条文を掲載しています)。
平成26年に行政不服審査法の改正がなされましたが「いわゆる「裁定的関与」に係る法律については、「現在の不服申立先を維持することを基本として、改正後の行政不服審査法を適用するための規定の整備を行うこととする。」とされました(平成25年5月「行政不服審査制度の見直しについて(案)総務省行政管理局)。そのため、行政不服審査法の改正後も、この仕組みは維持されています。

2.裁定的関与の場合の具体的な審査請求先の整理

市町村が行う事務で、さまざまなものが法定受託事務であることから、県知事が審査請求先となる例が多数見受けられます(逆に、自治事務については、基本的に県知事が審査請求先となることはありません-地方自治法そのた個別法に特則が規定されていることはあります)。
以下は、その整理になります。

【法定受託事務の場合】
・市長が行った処分
→ 知事に審査請求
・(市長でなくても、市の執行機関が行った処分)
→ 知事に審査請求
・市教育委員会が行った処分
→ 県選挙管理委員会に審査請求
・市選挙管理委員会が行った処分
→ 県選挙管理委員会に審査請求
・都道府県知事その他の都道府県の執行機関の処分又は不作為
→ 当該処分又は不作為に係る事務を規定する法律又はこれに基づく政令を所管する各大臣

3.個別法の定めに注意

個別法で、この基本ルールに対する特則的な規定がおかれていることが多いです。特に、市町村の「福祉」の現場においては典型的な事務処理であり、生活保護法、国民健康保険法、介護保険法において、すべて個別法において特則的規定が置かれていることに留意が必要です。


参照(旧法)

第二百五十五条の二  他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、法定受託事務に係る処分又は不作為に不服のある者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者に対して、行政不服審査法による審査請求をすることができる。
一  都道府県知事その他の都道府県の執行機関の処分又は不作為 当該処分又は不作為に係る事務を規定する法律又はこれに基づく政令を所管する各大臣
二  市町村長その他の市町村の執行機関(教育委員会及び選挙管理委員会を除く。)の処分又は不作為 都道府県知事
三  市町村教育委員会の処分又は不作為 都道府県教育委員会
四  市町村選挙管理委員会の処分又は不作為 都道府県選挙管理委員会


参照(新法)

第二百五十五条の二  法定受託事務に係る次の各号に掲げる処分及びその不作為についての審査請求は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、当該各号に定める者に対しするものとする。この場合において、不作為についての審査請求は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、当該各号に定める者に代えて、当該不作為に係る執行機関に対してすることもできる。
一  都道府県知事その他の都道府県の執行機関の処分 当該処分又は不作為に係る事務を規定する法律又はこれに基づく政令を所管する各大臣
二  市町村長その他の市町村の執行機関(教育委員会及び選挙管理委員会を除く。)の処分 都道府県知事
三  市町村教育委員会の処分又 都道府県教育委員会
四  市町村選挙管理委員会の処分 都道府県選挙管理委員会
2 普通地方公共団体の長その他の執行機関が法定受託事務に係る処分をする権限を当該執行機関の事務を補助する職員若しくは当該執行機関の管理に属する機関の職員又は当該執行機関の管理に属する行政機関の長に委任した場合において、委任を受けた職員又は行政機関の長がその委任に基づいてした処分に係る審査請求につき、当該委任をした執行機関が裁決をしたときは、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、当該裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができる。この場合において、当該再審査請求は、当該委任をした執行機関が自ら当該処分をしたものとした場合におけるその処分に係る審査請求をすべき者に対してするものとする。