普通財産の処分における「転売」の防止

1.普通財産の処分における「転売」等の防止について

普通財産の処分における「転売」の防止について検討してみます。地方自治法上、普通財産の処分に関しては、下記の通り、定められています(238条の5)。


(普通財産の管理及び処分)
第二百三十八条の五  普通財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができる。


地方自治法では、その前後の条文も含め、見てみて頂いてもおわかりのとおり、地方公共団体が保有する財産を処分するにあたり、「転売の防止」の措置をどのように講じるべきかということについて、法律上には規定がありません。したがって、民法などを参照し、契約の範囲内で手当てをすることになります。不動産を処分(売却)するにあたり、その不動産の処分を行うに至った経緯/事情などに照らし、用途指定を行っておくべきだとか「買戻しの特約」や「再売買の予約」といった条項を規定しておくことについては各地方公共団体がその裁量の範囲内で行うことになります。

2.事例をもとに考える

ここで、A市が、社会福祉法人Yに土地を売払いを行うものの、その売払いは老人ホームを運営してもらうためであり、長年にわたって施設を継続して運営してもらいたいということを想定してみましょう。

この場合、
:A案 契約書に明記して、用途として老人ホームに限定して売買する。
:B案 転売の禁止の履行の確保として、違約金条項を設ける
:C案 買戻しの特約を設ける  という3つが考えられます。このうち、買戻しの特約がもっとも効果的な方法になります(もしくは「再売買の予約」)。

すなわち、A案のように単に契約書に用途を明記するだけでは、当事者間の契約条の効力のみで「履行の確保」手段がなにもありません。当該社会福祉法人Yが他の用途での使用を開始したとしても、対抗できないこととなります。また、B案も同様に、仮に社会福祉法人Yが第三者に転売してしまった場合、土地という所有権は当該第三者のものになりますので、何ら対抗できないこととなります(なお、契約書上に、Y社は第三者に転売してはならないとの記載をすれば大丈夫ではないかと考えられる方がいらっしゃいますが、売買契約はあくまでもA市とYの間の効力しかなく、転売禁止の条項に違反して、物権を取得した第三者に対し、対抗することは出来ません)。これに対して、C案の買戻特約もしくは再売買の予約をつけ、なおかつ不動産登記上にそれを表した場合には、第三者に対抗できることになります。

3.横浜市公有財産規則の例

下記は「横浜市公有財産規則」の例です。用途指定をする場合等は、買戻しの特約を原則的にしなければならない旨が定められています。

-地方自治法-(買戻しの特約)
第66条の2 不動産を売り払う場合において、次のいずれかに該当する場合は、当該不動産について買戻しの特約をしなければならない。ただし、買戻しの特約に代わるものとして市長が認める措置をする場合には、この限りでない。
(1) 当該不動産を時価よりも低い価格により売り払う場合
(2) 当該不動産につき、第76条の規定により公用、公共用又は公共事業の用に供する用途指定をした場合
(3) その他市長が必要と認める場合
2 前条第6項及び第7項の規定は、前項の買戻しの特約について準用する。
3 第1項ただし書に規定する市長が認める措置をするときは、当該措置について必要な登記をしなければならない。