1.そもそも代理受領とは
代理受領とは、「債権者が弁済受領権限を第三者に与え、第三者が債務者からの給付を受領する」というものを指します(潮見佳男「プラクティス民法」より定義を引用)。具体的には「請負」の場合で活用されることが多いため、それを例にしますと、発注者S・注文者Gの工事請負契約において、注文者Gが有する請負代金債権について、GD間の契約により、Dが「Gにかわって」受領する権限を有することになります。
2.地方自治法における「代理受領」考え方
地方自治法は、地方公共団体の支払について、このような代理受領形式で、第三者から代金の請求を認めるか認めないのかについて、どのようなスタンスを取っているのでしょうか。地方自治法では、下記の通り、定められています(232条の5)。
第二百三十二条の五 普通地方公共団体の支出は、債権者のためでなければ、これをすることができない。
「逐条解説地方自治法」によると、「以前は、債権者以外の者に対して支出することができないとされていた(昭和38年改正前の令149)ため、従来から債権者の委任を受けた者に対する支払いの可否が問題とされた。昭和38年の改正により、「支払の効果が債権者に及ぶように」という意味で「債権者に対して」よりも「債権者のため」という広い表現が用いられた。」と説明されています。
さらに、各地方公共団体の工事請負約款に「乙は、甲の承諾を得て請負代金の全部又は一部の受領につき、第三者を代理人とすることができる。」とする規定が入っていることも多いです。こうした法律の定めと、個別の約款に照らすと、仮に、当該地方公共団体が、工事の発注者ではない別の第三者から、代理受領としてわが社に払ってほしいという依頼があった場合、それを承認して支払うことも、地方自治法上可能とされています。
3.代理受領を認めない取扱
なお、こうした代理受領を認めると、権利関係が複雑になるから(原則的には)認めないという“保守的”な運用をされている地方公共団体もあるのではないかと思います。
4.そのほか代理受領の例
たとえば地方公共団体が個人との間で委託契約を締結するものの、その報酬は、所属している事務所に対して支払うといったようなケースが考えられます。このように契約締結の相手方はAであるが、報酬の支払先はBにするということも(上記のような請負工事の例に限らず)行われることはあるようです。