負担付き寄附

3.負担付寄附の事例(1)

高齢者から宅地の寄附がなされるに際し、負担付寄附が行われた例を紹介いたします。木更津市では、公共施設の隣接地の所有者から、そのお住まいの宅地の寄附がなされるにあたって負担附寄附の受納に該当するということで議決がなされています(平成16年6月議会)。

「4の寄附の条件についてご説明をさせていただきます。寄附者はともに高齢で(中略)現在、居住の用に供している住宅地を公共施設として活用してほしいとのことで、木更津市に対しまして、寄附の申し出があったわけでございます。現時点で、寄附の申し出をした理由について確認をさせていただきましたところ、お二人がともに元気で冷静に判断できるうちに決断をして、寄附を完了させ、安心したいとのことでございました。(中略)寄附をした後も寄附者自身が生活の拠点として、必要と認められるまでの期間、寄附者を無償で入居させることが寄附の条件になっております。」
と議会において説明されております。この場合、公共施設への活用という点が寄附の条件として構成されているのではなく、寄付者の入居継続が寄附の条件として構成されている点が、特異な事例であります。

4.負担付寄附の事例(2)

プロ野球の球団の誘致にともない、負担付寄附が行われた例を紹介いたします。宮城県では、ある球場にプロ野球の球団を誘致するにあたって負担附寄附の受納に該当するということで議決がなされています(平成16年12月議会)。M県では、株式会社R球団との間で、以下のような「協定書」を締結いたしました。ニュースでも大きく話題になった事案ですが、本来、公の施設としての都市公園である球場をどのような形で、プロ野球の球場として用いる権利・義務を設定するか、非常に悩まれたのではないかと推測されますね。


・R球団は、球場の改修工事を行い、改修工事による建築物及び附属物を県に寄附する。
「工事内容]
メーンスタンド、既存内野スタンド、それから外野の増築・改修工事(2万3,000人収容可能のスタンド)
人工芝の施設、それから暗渠工などグラウンド改修工事
その他大型映像装置
電気、衛生、空調、照明装置工事の附属物一式工事
その他築山の築造工事
R球団が、M球場を管理することを認め、プロ野球等の興業、物販、放送、広告等の目的でM球場を使用すること及びそれに伴う収入のすべてを球団のものとすることを認める(=R球団に管理使用権を付与)
・その管理使用権の付与にあたっては、改正都市公園法の管理許可の主要を用いる。
・なお、負担付寄附の議案と同時に、県立都市公園条例を改正する(M球場に係る管理許可使用料を新設するための条例改正)


5.負担付寄附の事例(3)

ここで、駅前整備について負担付寄附が行われた例を紹介いたします。鎌ヶ谷市では、ある駅の駅北口横断橋整備事業の事業費について「負担付寄附の受納について」ということで議決がなされています(平成22年12月議会)。実際の覚書は掲載されていませんが、非常に緻密に計算されたスキームのように思えます。


・寄附者はS駅周辺地区のさらなる発展のための貢献及び当該橋に隣接している自己所有地を有効活用したいとの意向により、寄附の申し出があった旨
・すなわち寄付者は、当該整備事業が行われることによって自らにメリットがある
・横断橋が整備されると、(当然)市の所有・管理になるが、それは他の道路橋と同様である旨
・同市の公共施設整備基金条例第2条に定める寄附金にも該当するとして、公共施設整備基金を活用した寄附の受け入れという形が取られた旨
議決より先に、『覚書』が締結され、そこでは「この覚書では、負担付きの寄附の受納及び補正予算に係る議案が承認された日より効力を有する」という扱いとしてあった旨
・当該協定書では、「整備の内容、整備の予定時期、寄附の金額、寄附の時期、寄附金の返還、供用開始時期の遅延に対する対応等」が定められていた旨
・特に、具体的に工事の入札を行う必要があることから「横断橋の整備工事に係る入札の執行により契約金額が確定した後」に、寄附が行われるという旨


6.負担付寄附の事例(4)

ここで、A株式会社からX町に、温泉施設の寄附がなされるに際し、負担付寄附が行われた例を紹介いたします。


X町の議事録をそのまま引用しますと、「今年3月に公表しましたX町温泉自立化基本方針に基づき温泉の経営統合及び経営改善に向け、A株式会社より同社所有のY温泉の浴室、いわゆる温泉館について8月8日付で負担付き寄附の申し入れがあり、町ではこれを受納したく、‥のとおり契約したく、契約に当たり地方自治法第96条第1項第9号の規定により議会の議決を求めるものでございます。 なお、寄附の条件、いわゆる負担付きの内容ですが、今回寄附する温泉館について議会等の諸手続を経た上で地方自治法第244条の2の規定のもとでの指定管理者と指定することが条件となっております。 」
(赤線及び太字は引用者)


詳しい背景事情が分からないのですが、「指定管理者として指定すること」が条件となっている寄附というのはかなりレアなケースではないかと思われます。本来、指定管理者制度は、誰を指定するかにつき、全体的・総合的な判断として、首長がまず決め、それ自体、議会で議決を行うことが必要なものです。ただ、このような形で、負担付寄附の条件として、特定の株式会社を指定管理者として固定的なものとしてしまうことも、長及び議会の判断として可能だと思われます。なお、上記で出てくる町温泉自立化基本方針によると、合併前の旧町村から引き継いだ複数の温泉施設の運営一元化という側面があるようです。
※ http://www.town.misato.akita.jp/pdf/0247kaigiroku230907.pdf(参考リンク)