1.法定受託事務についての代執行とはそもそも何か
地方自治法上では、法定受託事務についての代執行について、下記の通り、定められています(245条の8)。
-地方自治法-
第245条の8 各大臣は、その所管する法律若しくはこれに基づく政令に係る都道府県知事の法定受託事務の管理若しくは執行が法令の規定若しくは当該各大臣の処分に違反するものがある場合又は当該法定受託事務の管理若しくは執行を怠るものがある場合において、本項から第八項までに規定する措置以外の方法によつてその是正を図ることが困難であり、かつ、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときは、文書により、当該都道府県知事に対して、その旨を指摘し、期限を定めて、当該違反を是正し、又は当該怠る法定受託事務の管理若しくは執行を改めるべきことを勧告することができる。
2 各大臣は、都道府県知事が前項の期限までに同項の規定による勧告に係る事項を行わないときは、文書により、当該都道府県知事に対し、期限を定めて当該事項を行うべきことを指示することができる。
3 各大臣は、都道府県知事が前項の期限までに当該事項を行わないときは、高等裁判所に対し、訴えをもつて、当該事項を行うべきことを命ずる旨の裁判を請求することができる。
2.法定受託事務についての代執行の要件
法律で定められた要件を分解すると以下のようになります。
- ➀都道府県の法定受託事務の管理若しくは執行・・・・法令の規定若しくは当該各大臣の処分に違反する者がある場合、②当該法定受託事務の管理若しくは執行を怠るものがある場合
- 本項から第八項までに規定する措置以外の方法によつてその是正を図ることが困難
- それを放置することにより著しく公益を害することが明らか
- まずは勧告・指示をしたけれど、従わなかった場合
3.法定受託事務についての代執行の手順
手順としては「勧告」(1項)、「指示」(2項)、「高等裁判所での裁判」(3項)の順に進みます。普通の訴訟と異なり、いきなり高等裁判所に進むのが特徴ですね。
4.法定受託事務についての代執行制度の由来
地方自治法旧151条の2が定めていた職務執行命令訴訟の手続に準じたもの(宇賀「地方自治法概説」3版p.269)。
5.2023年10月の国が提起した訴訟
NHKニュースによると、国は以下のように主張したようです。
[外部リンク]沖縄 辺野古工事の承認めぐる“代執行”裁判 初弁論で結審
国側は「最高裁判所で先月、承認しない県の事務処理が違法だという判断が確定しているにもかかわらず、違法な事務遂行を続けていて代執行以外の手段はない。日本の安全保障と普天間基地の固定化の回避が達成できず、放置することで著しく公益を害することは明らかだ」と主張しました。そのうえで「法治国家の基盤である『法律による行政』の原理に反する看過しがたい事態だ」などと県の対応を批判し、県に承認することを命じる判決を速やかに言い渡すよう求めました。