行政財産の目的外使用許可の際の「協定書」の締結

1.目的外使用許可に際し、使用料以外に、必要な経費を、使用する者に請求できるか

目的外使用許可は、公法的な法律関係ですので、条例で定まった対価(使用料)を行政処分(行政行為)を用いて賦課していくことになります。では、それ以外の”経費”分担はどうなるのでしょうか。この点は、地方自治法上、明確ではありません。地方自治法では、行政財産の目的外使用の際に「電気、ガス、水道」といった光熱費についてどういった負担関係が成立するのか、特に個別に定めた条文はありません。

ただし、たとえば横浜市の公有財産規則第33条に「行政財産を目的外使用することに伴う光熱水費等及び使用財産について維持保存、改良その他の行為をするため支出する経費は、すべて使用者の負担とする。ただし、国、他の地方公共団体その他公共団体若しくは公共的団体が使用者である場合又は第28条第1項各号のいずれかに該当する場合は、本市が負担することがある。」との規定があります。また名古屋市の公有財産規則第31条に「使用物件の使用に伴う電話、電気、ガス、水道等の諸設備の利用に必要な経費については、これを使用者に負担させるものとする。とあります。こうした定めは、条例・規則上の手当てがなされている一例ですが、無い場合も同様だと思われます。すなわち、自らが行政財産を使用し、」自らに利益がある以上、自らが負担するという基本的な前提に立ち、実費は使用者が負担するとの理解に立つとして実務が行われているものと思われます(学生さんの住むアパートでも、電気代は自己負担ですよね)。電気の場合は、子メーター方式や、独自に引き込み線を引く方式、その他適当な形で使用量を計算する方式などがあるかと思います。

以上のように、光熱水費の実費徴収は基本的に「負担させる」ことが原則であることから、免除する場合には、相応の根拠が必要になります。一般論としていえば、光熱費の実費徴収につき減免することが例規上何らかの手当てがなされているか(規則等で免除の条文があるか)という点、個別の目的外使用許可ごとにそうした点の決裁(=意思決定)が明確になされているかという点がポイントになります。どういった場合に免除を行うのかについてルールを作成して、決裁(=意思決定)を経ていないときは、単に実費の徴収を怠っていると受け止められかねないこともあるでしょう。

2.目的外使用許可に際し、必要な経費を請求するのは「私法上の契約」と捉える立場

ある市の監査では「そもそも自販機等の設置に係る光熱水費等の負担は、私法上の契約ととらえられるため、行政処分の結果としての行政財産使用許可書に添付されている許可条件を根拠に負担を求めることは適切ではありません。納入が滞っている事案はないとのことですが、負担額の算定基準を示したうえで、別途覚書等を締結することが望ましいと考えます。」(茅ヶ崎市平成25年4月22日行政監査報告)とされています。これは、目的外使用許可の許可条件に書いておくだけでは、こうした費用分担請求権が発生すると考えづらく、支払義務の範囲を明確させるべく、別段の取り交わしを行っておくべきという趣旨と考えられます。

3.目的外使用許可に際しての「協定書」の締結

実務では「××市△△庁舎の使用許可に係る光熱水費等の負担に関する協定書」を締結し、実際に、どの範囲までを実費負担額とするのか明記し、協定書に基づき請求することになると思われます。すなわち、目的外使用許可それ自体は行政処分ですが、それと並行して”契約”に類する書面を取り交わし、その契約に基づき、実費の負担を求める請求権が生ずるということになります。

さて、光熱水費以外にも、実際に要する費用については、きっちりと分担するということが(実費の公平な分担の観点から)要請されています。
たとえば、横浜市公有財産規則では、「行政財産を目的外使用することに伴う光熱水費等及び使用財産について維持保存、改良その他の行為をするため支出する経費は、すべて使用者の負担とする。ただし、国、他の地方公共団体その他公共団体若しくは公共的団体が使用者である場合又は第28条第1項各号のいずれかに該当する場合は、本市が負担することがある。」との規定があります。

ここでは『光熱水費等』と並んで『使用財産について維持保存、改良その他の行為をするため支出する経費』という記載ぶりで、それが記載されています(さいたま市財産規則も同旨)(他方で、「使用物件の使用に伴う電話、電気、ガス、水道等の諸設備の利用に必要な経費については、これを使用者に負担させるものとする。」といった簡潔な条文となっているところもあります。)。