地方自治法における「契約」の確定プロセス

1.地方自治法における「契約」の確定プロセス

地方自治法では、契約の締結について、下記の通り、定められています(234条)

(契約の締結)
5  普通地方公共団体が契約につき契約書又は契約内容を記録した電磁的記録を作成する場合においては、当該普通地方公共団体の長又はその委任を受けた者が契約の相手方とともに、契約書に記名押印し、又は契約内容を記録した電磁的記録に当該普通地方公共団体の長若しくはその委任を受けた者及び契約の相手方の作成に係るものであることを示すために講ずる措置であつて、当該電磁的記録が改変されているかどうかを確認することができる等これらの者の作成に係るものであることを確実に示すことができるものとして総務省令で定めるものを講じなければ、当該契約は、確定しないものとする。

上記の条文のうち、赤字の部分は電磁的記録に関するものですので、これを省略して読んでみて下さい。
わかりやすく読むと「契約書」を作成する場合、市長名(知事名)の公印それに相手方の公印がなければ、契約は確定しないということが書いてあります。一見すると当たり前の話ですが、民法上は、契約は必ずしも契約書の締結を以て成立するという絶対普遍のルールがあるわけではなく、最終的な契約書の締結に至らない段階(あるいは印鑑を押すより手前の段階)でなんらかの法的拘束力のある合意が成立したと見ることもあります。これに対して、地方自治法においては、とにかく正式な首長の公印が押される段階においては「契約は確定していない」という一つの確立された準則が打ち立てられていることになります。
そのため交渉過程で、一定の権限のある課長や部長が、なんらかのメモを作成し、そこに署名をしたとしても、そのこと自体が“契約”と捉えられることは通常はないということになります(民間同士の契約であれば、契約書を締結する場合であっても、その手前で何らかの合意があったと解釈で認定されることもあります。)。

2.地方自治法における電子「契約」の確定プロセス

上記の赤字部分に「総務省令で定めるもの」という記載があります。これを受けて、地方自治法施行規則では「地方自治法第234条第5項の総務省令で定めるものは、総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(略)第2条第2項第1号に規定する電子署名とする。」という定めがなされています(同規則12条の4の2)。