地方自治法の「督促」

1.地方自治法の「督促」とは何か

地方自治法では「督促」について、次のとおり、定められています(231条の3)。

-地方自治法-
第二百三十一条の三 分担金、使用料、加入金、手数料及び過料その他の普通地方公共団体の歳入を納期限までに納付しない者があるときは、普通地方公共団体の長は、期限指定してこれを督促しなければならない。
2  普通地方公共団体の長は、前項の歳入について同項の規定による督促をした場合においては、条例の定めるところにより、手数料及び延滞金を徴収することができる。

このように、地方自治法上の「督促」は、首長としての義務として位置づけられていることがまずわかります(条文上「しなければならない」と定められていることが分かります。)。督促を行うか行わないかにつき、裁量の余地はないというのが、裁判所の考えです)。また、督促は、必ず「期限」を指定して行わなければならないことが分かります

2.地方自治法の「督促」はいつ送るべきか

督促は、滞納状態(当初の履行期限を過ぎても、債務者が払わない状態)になってから送るものでることは、概念上、当然ですが、では、いつまでに送るべきなのでしょうか。これについては、地方自治法は特に規定を定めておりません。平成になってから各市町村は、債権管理条例を定めて、それに関するルールを条例のなかに書いたところと、書いていないところところがあります。

たとえば、札幌市債権管理条例の下位規範である、札幌市債権管理条例施行規則では、「督促状(様式4)により履行期限後30日以内に行うものとする。」とされています。

督促状に記載する「期限」についても、具体的な日数を、債権管理条例やその施行規則などで定めているところもあれば、定めていないところもあります。定めているところにおいては、10日や20日といった例が多いようです。

3.督促に対する審査請求

地方自治法上、下記の通り、定められています(231条の3第7項)。この規定により、督促に対する審査請求は、議会に対する諮問を行う(改正行政不服審査法の施行後においても、行政不服審査法第43条第1項第2号が適用され、行政不服審査会への諮問は経なくてもよい。)ということになります。


第二百三十一条の三
7  普通地方公共団体の長は、第一項から第四項までの規定による処分についての審査請求があつたときは、議会諮問してこれを決定しなければならない。


なお、国民健康保険にかかる督促のように都道府県の附属機関である特別の審査会(例:東京都国民健康保険審査会)が審査庁となるものは、もちろんそこで審査がされば足りますので、議会への諮問はそもそも無関係ということになります(地方自治法第231条の第7項の適用の枠外)。すなわち地方自治法第231条第7項は、首長が審査庁となる場合について適用があるものです。

3.督促に対する審査請求の議会への諮問の例

督促に対する審査請求の議会への諮問の例を、以下では、一例を挙げます(横浜市平成16年第3回定例会)。


諮問市第1号
病院使用料の督促処分に係る異議申立てに関する諮問
(異議申立内容)港湾病院使用料の督促処分の取り消しを求める
(諮問内容)異議申立ての棄却
(根拠法令)地方自治法第231条の3第7項(議会への諮問)


これがまさに議会に対する諮問が行われている例ということになります。