1.「既納の使用料は還付しない」という条例の定め
各地方公共団体の条例には「既納の使用料は還付しない。」とされている例がよくあります。下記は横浜市港湾施設使用条例”の例です。
(使用料の還付)
第16条 既納の使用料は、還付しない。但し、次の各号の一に該当する場合は、その全部又は一部を還付することがある。
(1) 不可抗力による使用不能のとき。
(2) その他市長において相当な事由ありと認めたとき。
これは使用料が先払い(前納付)になっているとき、あらゆる場合にキャンセルを認めた場合には公平を失する場合があるという観点から定められているものと考えられます(たとえば民間のホテルの場合でも、宿泊予約をしておきながら、理由を問わずキャンセルを認めていれば、やみくもな予約を行うマナー違反者が生じます。そのため、そうした現象を生じさせないために、民間のホテルでもキャンセル料が徴収されています)。
2.「既納の使用料は還付しない」という条例の定めに基づく運用
このような「既納の使用料」は還付しない、という条例になっている場合、地方自治体は、この「還付しない」という方針を貫く必要があります。
N市の定期監査の結果には「○○総合福祉センターの使用料の還付について、使用料還付申請書の還付申請の理由欄及び使用取消届の理由欄を査閲したところ、人数が揃わなかった等、還付の要件に該当しないと思われる理由が記載されたものが数多く見受けられた。」と記載されています。これは、イベントを行おうとしていったん使用許可を得ておきながら、単に主催者都合でイベントをキャンセルしたというに過ぎず、そうした場合には還付を行うべき扱いが正解なのではないかというのが監査委員の考えと思われます。ただ、台風の接近によるキャンセルなどの場合、どこまでを不可抗力というか、判断に悩む場合もありそうです。
3.「使用料」の納入が過誤納である場合の考え方
使用料につき、計算を誤っていた、あるいは誤納であった等の場合は、そもそもこうした「還付しない」といった趣旨があてはまる場面ではなく、金銭を徴収して歳入とすべき実体を欠いている以上、当然に還付すべきでしょう。