地方公営企業における訴えの提起

1.地方公営企業においては、訴えの提起に際して、どのような手続が必要か

地方公共団体が訴えの提起をするにあたっては、議会の議決が必要です。しかし、地方公営企業においては、特別の定めがあります。地方公営企業法第40条第2項を見てみましょう。

-地方公営企業法-
2 地方公営企業の業務に関する負担附きの寄附又は贈与の受領、地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起、和解、あつせん、調停及び仲裁並びに法律上地方公共団体の義務に属する損害賠償の額の決定については、条例で定めるものを除き、地方自治法第96条第1項第9号、第12号及び第13号の規定は、適用しない。

この規定により、地方公営企業の業務に関する訴えの提起は、「条例で定めるもの」以外は、地方自治法96条1項12号が適用されないため、議決が不要となるのです。条例が全く何もなければ、全て、議決が不要となります。

2.地方公営企業の訴えの提起について、各地方公共団体はどのような条例を定めているか

それぞれの地方公営企業の条例を見てみましょう。
□横浜市の事例
横浜市においては「横浜市交通事業の設置等に関する条例」では、基本的には訴え提起にあたっての議決は不要であるが、「管理者が異例または特に重要なものと認める本市がその当事者である審査請求その他の不服申し立て、訴えの提起、和解、あっせん、調停及び仲裁」についてのみ議決が必要という取扱がされています。「異例」とか「特に重要」とか言われても、なかなか難しいですね。
□名古屋市の事例
名古屋市においては「名古屋市水道事業等の設置等に関する条例」において、「訴訟物又は目的物の価格が100万円以上のもの」は議決が必要という扱いがされています。すなわち、ここでは、訴訟等になりそうな「事件」の金銭的な大きさに着目し、議決が必要か不要かが決まるとされているのです。