1.地方自治体が「反訴」するときとはどのようなときか
反訴とは、民事訴訟法第146条(被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。)に規定のある訴訟行為です。
簡単に言いますと、同じ裁判のなかで被告が行う行為で、被告が「反訴」を提起すると、本訴と反訴が同じ裁判官によって審理され、1個の判決で同時に結論が出ることになります。ものすごくシンプルに説明すると、(1)市民Xが、東京地方裁判所において、地方公共団体Y市を訴えた、(2)地方公共団体Y市は、それに対して関連性のある請求をもって、東京地方裁判所の同じ裁判官で同じ審理を求めるため、市民Xを「反訴」を提起した、という構図になります。
反訴を提起する場合には、反訴状を裁判所に提出することになります。
民事訴訟法の「反訴」の要件を満たさないときは、純粋に別の裁判を行うことになります。これを、別訴といいます。
2.地方自治体が「反訴」するときに議会の議決は必要か
地方自治法上、議会の議決(訴えの提起)に関しては、下記の通り、定められています(96条1項12号)。
第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第三条第二項 に規定する処分又は同条第三項 に規定する裁決をいう。以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において同じ。)に係る同法第十一条第一項 (同法第三十八条第一項 (同法第四十三条第二項 において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項 において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。
括弧書きが多すぎるため、上記の通り着色しました。この地方自治法の条文を読んでも、「反訴」という文字はありませんが、「訴えの提起」の概念に含まれるものとして、議決が必要と考えられています。
地方公共団体の認識としては、ややもすると、訴えられた事件(応訴事件)のなかで防戦?しているようなイメージをもってしまうことがあり、反訴を提起するにあたって、議会の議決が必要であることを忘れがちであるので注意が必要です。
3.民事事件や家事事件における「反訴」
一般的な民事・家事の世界における反訴の例を説明いたします。X(妻)からY(夫)に離婚を請求したのに対し、Y(夫)からX(妻)に対して離婚を請求する反訴を提起するというものがあります。あれ、なぜ二人とも離婚を求めているのに訴訟になっているのと思われるかも知れませんが、そこは、財産分与・慰謝料や親権といった別の争いが絡んでいることが多いです。